STORY.№12:運命の面接

ある晴れた午後、田中(仮名)は新たな仕事を求めて面接に向かっていた。
彼は努力家で、これまでも様々な職場で経験を積んできたが、運に恵まれない不運な男だった。

今日の面接もまた、そんな運命の日になるとは知らずに。
田中は企業のオフィスに到着し、緊張した面持ちでドアを開けた。

面接官は中年の男性数名、一見すると威厳のある人物だった。
田中は緊張しながらも、必要な自己紹介を始めた。
「田中健太です。大学では経済学を学び、前職では営業職として…」

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しかし、話し始めた瞬間、ある面接官は目を細め、頬を手で支えた。
田中は一瞬、何が起こったのかわからなかった。
彼は質疑応答を続けた。
「私は前職で…」 その間に、面接官はまさに田中の目の前でまぶたを重くしていき、ついにはぐっすりと寝てしまった。

田中は驚きと困惑が入り混じった表情で彼を見つめた。
面接のために力を入れてきたのに、どうしてこんなことが起こるのか。

彼は気を取り直し、何とか自分を奮い立たせて続きを話した。
数分後、面接官は目を覚ましたが、既に田中の話には興味を失っていた。
田中は不安を抱きつつ、その日も面接は終わった。

次の日も、また別の企業の面接が待っていた。
期待を胸に抱きながら向かったのだが、またもや同じことが繰り返された。

新しい面接官も、田中が話を始めるとまるで催眠術にかかったかのように、まどろみ始めた。
田中は無力感に苛まれ、どうして自分にこんな不運が続くのかと悔やんだ。

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時が経つに連れて、田中の面接は次第に幻のようになっていった。
彼がどんなに頑張っても、面接官たちは彼の話を一言も聞かず、また寝てしまう。
田中は、もはや面接に出かけることが恐怖になっていた。

ある晩、彼は家で落ち込んでいた。
「どうして俺はこんなにも不運なんだ…?」
彼は鏡の前で自分を見つめた。
疲れた顔、薄明るい目。
希望を失いかけている自分がいた。

そんな時、ふと友人から聞いた話を思い出した。
「面接の前に、必ず良い運を呼び込むジンクスを試してみろ!」
その言葉に期待を抱き、田中はネットで調べることにした。
数日後、運が開ける兆しとして「自分の幸運を信じる」という言葉を心に刻み、面接場面でのイメトレも行うようになった。
しかし、運命は変わらなかった。

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田中は次々と面接に挑み続けたが、全ての面接官が彼の話の真剣さを無視し、時には居眠りをされてしてしまう。
彼は精神的にも限界に達し、「もう、無理だ」と投げやりになった。

ある日、彼は長年の夢であった職種の面接に行くことになった。
心の底から「ああ、これが最後かもしれない」と思いながら、会社の一室に入った。
しかし、運命は再び彼を裏切った。

面接官は、見た目は非常に真剣そうだったが、すぐに姿勢を崩し、またしても寝入ってしまった。
田中は心の中で叫んだ。
「もうやめてくれ!」 だが、願いも虚しく、彼は途方に暮れるしかなかった。
その瞬間、彼の心は砕け、未来を見失った。

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結局、田中は何度も面接を受けたが、その度に運は彼を見放した。
友人や家族からの励ましも、面接官の寝顔が脳裏から離れず、支えにはならなかった。
そして、隔たった夢を叶えることができないまま、日々は過ぎていった。

数日後、田中は最後の判断を下した。彼は転職をあきらめ、人生の新たな道を選ぶことにした。
だが、その道もまた、厳しいものであった。
何もかもが裏目に出た田中は、街を彷徨い、自分の生き方に疑問を抱く日々が続いた。
彼にとっては、運命を変えることは叶わなかった。
そんな彼の心の中には、「面接中に夢の世界に誘ってくれる無邪気な面接官」という呪いのような思い出が深く刻まれていた。
田中は懸命に生きようとしたが、結局その先には希望すら見えなかった。
彼の人生は、不運な出来事に翻弄されるまま、ゆっくりと暗い影に包まれていくのだった。

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運命とは、時に我々を試すものであり、その試練があまりにも過酷なとき、希望は消えてしまうこともある。
田中にとって、その真理は身をもって実感されたのだった。

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